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家族のための障害年金、覚えておきたい3つのこと

はじめに

ご本人が病気やケガで動けなくなったとき、実際の連絡や手続きをご家族が担うことは少なくありません。

「何から手をつければいいのかわからない」――そんなときは、すべてを一度に進める必要はありません。

治療を最優先にしながら、生活を支える制度についても少しずつ情報を集めておくと、その後の手続きが進めやすくなります。

今回は、本人が動けない状況で、ご家族がまず確認しておきたい3つのポイントを、具体的な手順とともに紹介します。

1.「初診日」を記録しておく

障害年金では、「初診日」が重要な基準になります。初診日とは、障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。同じ傷病で転医した場合は、最初に診療を受けた日が初診日となります。

そのため、「今かかっている病院を受診した日」だけでなく、それ以前にどの医療機関を受診したのかを確認しておくことが大切です。

家族で次の情報をメモしておきましょう。

  • 受診した時期・日付(正確な日付が分からなくても、まずは分かる範囲で記録する)
  • 病院名・診療科
  • そのときの症状や受診したきっかけ
  • 紹介状の有無や紹介元
  • 診察券、領収書、お薬手帳などの受診を確認できる資料

例えば、最初は内科を受診し、その後に精神科・心療内科などへ紹介された場合、その内科の受診が障害の原因となった傷病についての初診日に当たることがあります。ただし、どの受診が初診日に当たるかは傷病との関係によって判断されるため、迷う場合はご相談ください。

2.傷病手当金を確認する

会社員など健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガの療養のため仕事を休み、一定の要件を満たした場合には、健康保険から傷病手当金が支給されることがあります。支給額は原則として、支給開始日以前の一定期間の標準報酬月額を基に計算した日額の3分の2相当です。

支給期間は、同一の傷病について、支給開始日から「通算して1年6か月」が上限です。単純に「休み始めてから1年6か月」と考えるのではなく、途中で支給されない期間がある場合の通算の仕組みに注意が必要です。

まずは次の順番に確認してみましょう。

  1. 勤務先の総務・人事担当者、または加入している健康保険の窓口に連絡する
  2. 傷病手当金支給申請書を確認する
  3. 主治医の証明が必要な部分について、医療機関に確認する
  4. 勤務先の証明が必要な部分を確認し、加入している健康保険へ提出する

なお、傷病手当金には、業務外の傷病であること、仕事に就けない状態であること、連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること、休業期間について給与の支払いがないこと(給与が一部支払われている場合は調整されることがあります)などの要件があります。詳しくは加入する全国健康保険協会または県方保険組合に確認しましょう。

自営業・フリーランスなど、国民健康保険の被保険者については、健康保険の傷病手当金の対象とは原則なりません。ただし、加入している制度や自治体によって独自の給付が設けられている場合がありますので、加入先に確認しましょう。

3.年金事務所などに「相談」してみる

障害年金を今すぐ請求するか決めていなくても、年金事務所などで制度や手続きについて相談できます。障害年金は、初診日、初診日に加入していた年金制度、保険料納付要件、障害状態、請求する時期などによって取扱いが変わります。

相談時には、例えば次の点を確認するとよいでしょう。

  • 初診日について、どの受診日を確認すべきか
  • 保険料納付要件について確認する
  • 障害年金を請求する場合のおおまかな手続きの流れ
  • 準備が必要となる書類
  • 請求時期についての一般的な考え方

「だいたいどれくらいの金額がもらえるか」「何か月で必ず支給されるか」については、個別事情や審査によって変わるため、最初から確定的に考えないことが大切です。障害年金の受給可否や等級は、必要な要件を満たしているか、提出書類、障害の状態などを踏まえて判断されます。

本人が年金事務所へ行くことが難しい場合でも、本人の委任状があれば、家族などが代理人として相談できます。

年金事務所に相談する前に、これも準備しておく

  • 基礎年金番号を確認する
  • 職場の休職制度や復職に関するルールを確認する
  • 加入している生命保険・医療保険などの保障内容を確認する
  • 本人が日常生活や仕事でどのようなことに困っているのか、家族から見た具体的な状況をメモしておく

特に、日常生活上の困りごとは、後に障害年金の診断書や病歴・就労状況等申立書などを準備する際に、当時の状態を整理するための資料として役立つことがあります。記録するときは、「何ができないか」だけでなく、どのような場面で、どの程度の支障があり、どのくらい周囲の援助が必要なのかを具体的に残しておくと整理しやすくなります。

実際の流れをイメージしてみる

以下は、特定の個人の事例ではなく、手続きの流れをイメージするための一例です。実際の時期や手続きはケースによって異なります。

発症・受診直後:本人が動けない場合、家族が会社へ連絡し、休職などについて相談。同時に医療機関の受診日や病院名を記録します。

1か月程度:傷病手当金の対象となる可能性があれば、勤務先や健康保険に制度を確認。必要書類を確認します。

3か月前後:仕事の継続ができなかったり、生活費の見通しを考えながら、年金事務所などで障害年金について相談。初診日や保険料納付要件などを確認します。

その後:本人の体調を見ながら、障害年金を請求するか検討。必要に応じて診断書などの準備を進めます。

最初からすべてを完璧に進める必要はありません。まずは「初診日の手がかりを残す」「傷病手当金を確認する」「年金について相談する」という順番で、一つずつ進めていきましょう。

傷病手当金と障害年金は、重複する場合に注意

傷病手当金と障害厚生年金等は、同一の傷病などについて受給する場合、支給額の調整が行われることがあります。障害年金がさかのぼって支給された場合、すでに受け取った傷病手当金について返還が必要になることもあります。

「傷病手当金を受けながら障害年金の準備をする」こと自体は可能ですが、両制度の支給関係は個別に確認する必要があります。障害年金の受給が決まった場合は、加入している健康保険にも必ず確認しましょう。

家族自身のケアも忘れずに

  • 手続きを一人で背負わず、家族で分担する
  • 分からないことを一人で抱え込まず、年金事務所や社労士に相談する
  • 疲れがたまっていると感じたら、支える側にも休む時間をつくる

ご本人を支えることに集中するあまり、家族自身が疲れ切ってしまうこともあります。制度を使うことは、本人を支えるためだけでなく、支える家族の負担を減らすことにもつながります。

よくある質問

Q.本人が申請に消極的です。家族が説得すべきでしょうか?

A.まずは「請求するかどうかを決めるために、情報だけ確認してみよう」と伝える方法があります。最終的に請求するかどうかは、本人の意思や状況を踏まえて検討しましょう。

Q.家族が代理で年金事務所に相談できますか?

A.本人の委任状があれば、家族などが代理人として相談できます。

Q.傷病手当金と障害年金は同時にもらえますか?

A.同一の傷病などについては、傷病手当金と障害厚生年金等の支給調整が行われる場合があります。加入している健康保険に確認してください。

Q.自営業やフリーランスの場合、傷病手当金の代わりになる制度はありますか?

A.健康保険の傷病手当金は原則として対象外ですが、加入している国民健康保険や自治体等に独自の給付がある場合があります。また、生活福祉資金など別の支援制度が利用できる場合もあるため、自治体の窓口などで確認してください。

最後に

ご本人が一番つらい時期に、利用できる制度を知らないまま時間が過ぎてしまうことは避けたいものです。

「治療に専念してもらうために、制度のことは家族が少し調べておく」――それだけでも十分な一歩です。

まずは、①初診日の手がかりを残す、②傷病手当金を確認する、③年金事務所などに相談する。この3つから始めてみてください。すべてを一度に完璧に進める必要はありません。

参考資料(2026年9月時点で確認)

  • 日本年金機構「障害年金(受給要件・請求時期・年金額)」
  • 日本年金機構「初診日」
  • 日本年金機構「本人が年金の相談に行けないときは、家族や友人が代わりに相談に行ってもいいですか。」
  • 日本年金機構「年金相談や手続きを代理人に委任するとき」
  • 協会けんぽ「傷病手当金|給付と手続き」
  • 協会けんぽ「傷病手当金と老齢年金、障害厚生年金等は同時に受けられない場合があります」

 

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